セッション情報 ポスターセッション(消化器病学会)

肝臓(門脈圧亢進症)

タイトル 消P-83:

1型肝腎症候群に対するノルアドレナリンの治療経験

演者 橋本 知実(日本医大・消化器内科)
共同演者 楢原 義之(日本医大・消化器内科), 金沢 秀典(日本医大・消化器内科), 糸川 典夫(日本医大・消化器内科), 近藤 千紗(日本医大・消化器内科), 福田 健(日本医大・消化器内科), 松下 洋子(日本医大・消化器内科), 城所 秀子(日本医大・消化器内科), 厚川 正則(日本医大・消化器内科), 中塚 雄久(日本医大・消化器内科), 坂本 長逸(日本医大・消化器内科)
抄録 【目的】1型肝腎症候群(HRS)へのterlipressinの有効性が報告されている。Terlipressinが一般使用できない北米からその代用薬としてノルアドレナリンを用い有効であったことが少数報告されている。そこで、1型HRS患者にノルアドレナリンを投与しその治療効果について検討した。【方法】HRSの定義はInternational Ascites Clubの診断基準に従った。2009年3月から2011年12月までに1型HRSの治療としてノルアドレナリンを投与した肝硬変患者4例(平均年齢64.8歳、男性3例、女性1例)を対象とした。Child-Pugh score 11.5±2.4点、T-Bil 2.4±1.6mg/dl、PT 41.9±12.6%であった。ノルアドレナリン0.1-0.6μg/kg/minの持続静注を平均17.5(3-42)日間とアルブミン(10-25g/日)の併用投与を行った。なお、本治療は学内倫理委員会の承認を受けたのち行った。【結果】1.尿量は362±174ml/日から561±103ml/日へ増加する傾向を示した。2.クレアチニン(Cre)は治療前3.70±1.16mg/dlから治療終了時3.13±1.76mg/dlへ低下したが、有意な差は見られなかった。3.Creが1.5 mg/dl未満に低下した離脱例は1例、Creが1.5 mg/dl未満に低下しないものの投与前値より30%以上低下した部分寛解例は1例、それ以外の無反応例は2例であった。4.離脱例の1例は1型HRSの再燃をきたし、診断後56日目に死亡した。部分寛解例の1例は診断後160日生存し肺炎のために死亡した。無反応例2例はそれぞれ肺炎とHRSの増悪のために、診断後10日目と4日目に死亡した。平均生存期間は57.5±72.2日であった。5.ノルアドレナリン投与による副作用は認めなかった。【結語】1型HRSに対するノルアドレナリンの投与により尿量の増加傾向が得られた。また、離脱例と部分寛解例を各1例に認めた。さらに、重篤な副作用はなく安全に投与可能であった。従って、本剤は1型HRSの治療薬として有用な印象を持ったが、その有効性を明らかにするためには更なる治験が必要である。
索引用語 1型肝腎症候群, ノルアドレナリン