セッション情報 ポスターセッション(消化器病学会)

肝臓(肝再生、肝不全、移植)

タイトル 消P-86:

骨髄細胞投与による酸化ストレス制御を介した肝発癌抑制メカニズムの解明

演者 高見 太郎(山口大・消化器病態内科学)
共同演者 寺井 崇二(山口大・消化器病態内科学), 前田 雅喜(山口大・消化器病態内科学), 坂井田 功(山口大・消化器病態内科学)
抄録 【背景と目的】これまで我々は、肝細胞癌のない非代償性肝硬変症に対して「自己骨髄細胞投与(ABMi)療法」を多施設臨床研究として行い、その有効性と安全性を報告してきた。しかし肝硬変症は高発癌状態であるため、骨髄細胞投与が肝発癌に与える影響をマウスモデル系で評価した結果、肝発癌を抑制することを見いだし昨年度の本学会で報告した。そこで今回は、骨髄細胞投与による肝発癌抑制メカニズムを明らかにする。
【方法】生後2週雄マウスへのN-nitrosodiethylamine(DEN)単回投与と週2回CCl4反復投与により「マウス肝硬変高発癌(DEN/GFP-CCl4)モデル」を作成し、コントロール群とした(n=17)。またDEN投与後2ヶ月から同種同系GFP陽性骨髄細胞を2週間毎に計5回(1×106個/回) 尾静脈投与し、これを骨髄投与群(n=23)とし、DEN投与後4.5ヶ月時点の肝発癌動態を組織学的に評価した。また肝線維化評価をシリウスレッド染色、酸化ストレスを肝8-OHdG量と肝SOD活性により評価した。さらに免疫組織学的な各種SOD蛋白や核内Nrf2蛋白発現細胞の解析やDNA-chip解析により骨髄細胞投与の肝発癌抑制メカニズムを解析した。
【結果】DEN投与後4.5ヶ月の骨髄投与群において、foci及び腫瘍の発生率(foci/腫瘍; p<0.001/p<0.05)と個数(p<0.01/p<0.001)は有意に低く、サイズ(p=0.35/p=0.43)は同等でGFP陽性細胞由来腫瘍は認めなかった。また骨髄投与群では、肝線維化は有意に抑制され(p<0.05)、肝8-OHdG量は0.85倍(p<0.01)と有意に低下しており、背景肝に多くの核内Nrf2蛋白発現細胞の生着やHeme oxygenase-1発現の亢進(22.12倍, p<0.05)を認めた。さらに骨髄投与群で肝SOD活性は有意に高く保持されており(p<0.05)、背景肝にSOD2及びSOD3発現細胞の増加やGFP&SOD3共発現細胞を蛍光二重染色で確認した。
【結論】肝硬変高発癌マウスへの骨髄細胞投与は肝発癌を抑制し、これには投与骨髄細胞による直接的な酸化ストレス制御機構が寄与している。
索引用語 酸化ストレス, 骨髄細胞