セッション情報 ポスターセッション(消化器病学会)

肝臓(肝再生、肝不全、移植)

タイトル 消P-89:

当院における劇症肝炎および遅発性肝不全34例の検討

演者 荒川 恭宏(名古屋大・消化器内科)
共同演者 片野 義明(名古屋大・消化器内科), 中野 聡(名古屋大・消化器内科), 増田 寛子(名古屋大・消化器内科), 石津 洋二(名古屋大・消化器内科), 葛谷 貞二(名古屋大・消化器内科), 舘 佳彦(名古屋大・消化器内科), 本多 隆(名古屋大・消化器内科), 林 和彦(名古屋大・消化器内科), 石上 雅敏(名古屋大・消化器内科), 後藤 秀実(名古屋大・消化器内科)
抄録 【目的】劇症肝炎の発生頻度は年間350人程度と低いものの、一旦発症すると急速な経過をたどる予後不良な疾患である。一般に臨床病型(脳症発症までの期間)、成因、合併症の有無等により予後が異なるとされている。当院にて劇症肝炎および遅発性肝不全(LOHF)にて治療を行った症例での患者背景、予後を検討することを目的とした。【方法】1992年1月より2012年2月までに当院で劇症肝炎およびLOHFにて治療を行った34例を対象とし、内科的に救命できたものとそれ以外(肝移植または死亡)でそれぞれの因子について検討を行った。【成績】臨床病型では急性型が19例(56%)、亜急性型が14例(41%)、LOHFが1例(3%)で、内科的治療での救命数はそれぞれ9/19例(47%)、5/14例(35%)、0/1例(0%)であり、脳症発現までの期間が長いほど内科的救命困難であった。成因別では原因不明が19例、ウイルス性が11例 (A型1例、B型9例、B+C型合併1例)、自己免疫性、薬剤性がそれぞれ2例であった。成因での予後に有意差は認めず、またB型肝炎のうち、急性型と、キャリアの急性増悪では予後に差を認めなかった。合併症は感染、DIC、脳浮腫、消化管出血、腎不全の順に高率で、合併症が2個以上の症例は予後不良な傾向にあった。またAFP、肝細胞障害増殖因子(HGF)と予後に有意差は得られなかったものの、AFPが一旦上昇し、HGFが比較的低値の症例において予後が良好な傾向を認めた。治療法に関しては、人工肝補助療法が中心だが、自己の肝再生、または肝移植までの代替療法であり限界もある。肝移植施行例中の救命数は急性型で7例中6例、亜急性型で3例中2例であった。【結論】臨床病型以外の因子において予後の有意差は認めなかったが、合併症対策、また肝移植適応の新基準も参考に、内科的治療継続か肝移植適応かを適切に判断することが重要かと思われた。
索引用語 劇症肝炎, 遅発性肝不全