セッション情報 シンポジウム5(消化器病学会・消化器内視鏡学会・消化器外科学会・消化器がん検診学会合同)

胃癌発生と腸上皮化生

タイトル 消S5-15:

腸上皮化生と胃癌組織における REG 蛋白発現の意義について

演者 福井 広一(兵庫医大・内科(上部消化管科))
共同演者 関川 昭(大阪赤十字病院・消化器科), 三輪 洋人(兵庫医大・内科(上部消化管科))
抄録 【背景・目的】 Regenerating gene (REG) はラットの再生膵ラ氏島よりクローニングされた遺伝子である.近年,H. pylori 感染胃炎や胃癌組織で強発現する遺伝子が網羅的に検索され,共通して REG 遺伝子が同定されことから,REG が胃炎からの発癌に重要な役割を果す可能性が示唆されている.興味深いことに,REG 蛋白は前癌または傍癌病変と考えられる腸上皮化生にも発現している.そこで本研究では,腸上皮化生と胃癌組織における REG 蛋白発現の意義について検討した.【方法】 105 例の早期胃癌を対象に腸上皮化生の有無と癌および腸上皮化生における REG 蛋白の発現を免疫組織学的に検討した.加えて,腸上皮化生および癌細胞における REG 蛋白,MUC2,MUC5AC,CDX2 の発現パターンならびに REG 蛋白発現と予後の相関を解析した.また,TS-1/CDDP 治療を受けた stage IV の胃癌患者 (70 例) における REG 蛋白発現と化学療法への反応性および予後について検討した.【結果】 86 例(81.9%)の早期胃癌に腸上皮化生が認められ,そのうちの 83 例 (96.5%) の腸上皮化生は REG 陽性であった.Intestinal-type および diffuse-type の早期胃癌では,それぞれ 88.3% (68/77) と53.5% (15/28) に REG 陽性の腸上皮化生を認めた.腸上皮化生における REG の発現分布は MUC2 に類似したが,それ以外に内分泌細胞にも陽性像を認めた.しかしながら,癌組織における REG 発現と CDX2, MUC2, MUC5AC 発現には統計学的に有意な相関は認めなかった.REG 陽性胃癌患者は陰性患者に比べ累積生存率で予後不良であった (log-rank test, P < 0.05).また, REG 陽性胃癌患者は陰性患者に比べ First line の TS-1/CDDP 治療に対する反応性が不良であった(P < 0.001).【結論】 REG 陽性胃癌には腸上皮化生から発生したと考えられる病変があり,その病変は化学療法に対して抵抗性を示す可能性がある.
索引用語 REG, 胃癌