セッション情報 ポスターセッション(消化器病学会)

肝臓(肝再生、肝不全、移植)

タイトル 消P-91:

当院における急性肝不全症例への脳死肝移植適応と問題点

演者 柿木 嘉平太(金沢大・消化器内科)
共同演者 山下 竜也(金沢大・消化器内科), 金子 周一(金沢大・消化器内科)
抄録 【目的】当院では2010年6月に脳死肝移植提供施設の認定を受けて,肝移植目的に紹介される急性肝不全症例も増加傾向にあるが,肝移植実施までの適応評価,治療管理等において判断や対処に苦慮する場面もしばしば発生する.2010年6月以降に当科に紹介された急性肝不全症例を検討し,当院における急性肝不全症例の対応における問題点について検討した.【対象と方法】対象は2010年6月~2012年2月にかけて,当院にて肝移植および治療管理を目的に紹介入院となった急性肝不全症例(アルコール性肝炎を含む)12例である.男女7:5,入院時年齢26~68歳,急性肝不全・非昏睡型5例,昏睡型4例,LOHF1例(B型肝炎急性増悪2例,E型肝炎1例,薬物性2例,自己免疫性2例,原因不明3例),アルコール性肝炎2例で,急性肝不全・非昏睡型のうち2例は入院後に昏睡型へ進展した.当科入院後,治療管理を行いつつ肝移植適応評価,申請手続きを行った.また,昏睡例は原則的にICU管理の上で血液浄化療法,血漿交換等を行った.【結果】12例のうち,急性肝不全・非昏睡型3例およびアルコール性肝炎2例は内科的治療にて回復した.昏睡が認められた7例のうち1例は社会背景に問題があり,肝移植適応外と判断されたが,2例で生体肝移植が検討され,4例でドナー適格者がいなかったため脳死肝移植申請を行った.しかし,肝移植が施行された症例はなく,7例全例死亡しており,その理由はとしては高度脳浮腫1例,肺炎1例,肺アスペルギルス症1例,急性膵炎2例,家族からの取消希望1例であった.一方,アルコール依存症や社会背景の問題,家族からの移植拒否といった搬送前に肝移植適応外と判断できる症例も認められた.また,病状の進行に伴い,肝移植を断念するタイミングの判断に難渋する症例があり,人工呼吸器管理下での昏睡度評価や,集中治療中の膵炎合併が問題となった.【結語】急性肝不全例の治療は病院での負担も大きく,紹介施設・関連施設と連携して,より適切な移植医療を提供できる体制を構築していく必要があると思われた.
索引用語 脳死肝移植, 急性肝不全