セッション情報 ポスターセッション(消化器病学会)

肝臓(症例報告)

タイトル 消P-92:

回復過程を詳細に観察し得た、副腎皮質ステロイド投与によるHBVキャリア急性増悪例

演者 安倍 修(JR仙台病院・消化器科)
共同演者 及川 圭介(JR仙台病院・消化器科), 猪股 芳文(JR仙台病院・消化器科), 内山 志保(JR仙台病院・消化器科), 齋藤 真弘(JR仙台病院・消化器科)
抄録 副腎皮質ステロイド投与によるHBVキャリア再活性化による肝炎増悪は、核酸アナログ製剤投与により予防可能であるが、一度発症してからの治療はしばしば難渋する。今回、我々は副腎皮質ステロイド投与で急性増悪したHBVキャリアに対し核酸アナログ製剤投与と副腎皮質ステロイド剤の漸減により肝炎沈静化が得られるまでの過程を詳細に観察し得た1例を経験したので報告する。症例は59才女性。47才時にHBVキャリアと診断され、定期通院経過観察を受けていた。今回のエピソード直前の肝機能はAST 23IU/mL、ALT 13IU/mL、ウイルスマーカーはHBsAg(+)、HBsAb(-)、HBeAg(-)、HBeAb(+)、HBV-DNA 3.5 log copies /mLであった。近医にて慢性好酸球性肺炎と診断され、PSL 25mg / day14日間、20mg / day28日間、17.5mg / day28日間、15mg / day28日間、12.5mg / day28日間の投与を受けたところ高度の肝機能障害が出現、当科を紹介された。受診時の肝機能値はT.Bil.2.62 mg/dl、AST 786 IU/mL、ALT 921 IU/mL、PT 94%、HBV-DNA 8.6 log copies /mLであった。直ちにエンテカビル投与開始し、PSLを10mg / dayに減量したが入院第8病日にAST 1415、ALT 1245、T.Bil.も13.66まで上昇した。PSLを5mg / dayに減量したところ肝機能改善、HBV-DNAも低下、全身倦怠感等の自覚症状消失し退院した。退院15ヶ月後の現在、PSLは 2mg / day投与、エンテカビル継続中であるがT.Bil.0.71、AST 23、ALT 14、HBV-DNA 未検出と経過良好である。本症例は副腎皮質ステロイド投与によるHBVキャリア再活性化による肝炎増悪例で、エンテカビル投与とステロイド剤の漸減に伴う肝炎沈静化の過程を経時的かつ詳細に観察可能であった点で、臨床の現場で同様の症例に遭遇した際の示唆に富むと思われた。
索引用語 HBV再活性化, 副腎皮質ステロイド