抄録 |
【緒言】急性E型肝炎は比較的予後良好な疾患とされ、肝外病変の報告も稀である。今回我々は、無痛性甲状腺炎を合併し、自己免疫性肝炎との鑑別を要したとともに、肝炎からの回復が遷延した症例を経験したので報告する。【症例】65歳女性【主訴】黄疸【現病歴】H23年12月中旬から嘔気、尿の濃染が出現して近医を受診し、精査治療目的で12月下旬当院を紹介入院となった。【入院時所見】体温37.4度,意識清明,腹水(-),WBC 9450, Hb 14.5, Plt 15万, Alb 3.9, AST 5886, ALT 4847, ALP 1342, T-Bil 19.2, PT 42.1%であった。ウイルスマーカーはA型,B型,C型,サイトメガロ,EBウイルスすべて陰性。IgG 2020, ANA 5.6, AMA<20, 抗LKM1Ab 20.4, TSH<0.03, Free T3 6.19, Free T4>6.00であった。翌日に肝生検を行い、他のウイルスや自己抗体も提出したが、これらは年末のため結果が出ず、PTが40%程度と劇症化の危険性があり、暫定的なAIH scoreではprobable AIHであったため、PSL40mgを開始した。これにてtransaminaseと凝固因子は徐々に改善するも、1月に報告のHEV-RNAは3×10E2であり、肝組織結果はsubmassive necrosisはあるがinterface hepatitis(-)でE型急性肝炎と診断した。また甲状腺機能は抗TPO Ab 9.7, 抗サイログロブリン抗体 333.4, 抗TSH リセプター抗体(-)から無痛性甲状腺炎と診断。徐々にeuthyroidからhypothyroidに移行したため、2月上旬からチラージンを開始した。その後も黄疸が遷延し、腹水、全身衰弱を認めたがIVH管理、リハビリを継続し、徐々に全身状態改善中である。【考察】本症例に文献的考察を踏まえ報告する。 |