セッション情報 ポスターセッション(消化器病学会)

肝臓(症例報告)

タイトル 消P-94:

経皮的ドレナージ術により治療し得た化膿性門脈炎の一例

演者 奥山 俊介(市立岸和田市民病院・消化器内科)
共同演者 藤井 善憲(市立岸和田市民病院・消化器内科), 星 智子(市立岸和田市民病院・消化器内科), 陣 佑祥(市立岸和田市民病院・消化器内科), 田中 裕一(市立岸和田市民病院・消化器内科), 毛利 陽一(市立岸和田市民病院・消化器内科), 木村 昇(市立岸和田市民病院・消化器内科), 高谷 晴夫(市立岸和田市民病院・消化器内科), 梶村 幸三(市立岸和田市民病院・消化器内科)
抄録 患者は63才男性で、基礎疾患としてアルコール性慢性膵炎及び肝硬変がある。一ヶ月ほど前より全身倦怠感と食欲不振を自覚し、徐々に増悪したため当院を受診した。来院時の採血では著明な炎症反応(WBC:24400, CRP:23.65)と肝胆道系酵素の軽度上昇(GOT:91, GPT:50)を認め、38度近くの発熱も伴っていた。腹部造影CT検査では、門脈右枝は肝門部で塞栓により血流が完全に途絶しており、その末梢側である門脈内腔はlow densityを示して著明に拡張し、肝表面近くまで連続して門脈内腔の拡張を認めた。採血での炎症所見と画像所見から門脈内に膿瘍が充満していると考え、経皮的に排膿することとした。エコーガイド下に経皮的ドレナージチューブを右門脈内に留置すると、灰白色の膿瘍の排出を認め、培養ではグラム陽性球菌が検出された。その後はドリペネム投与とドレナージチューブ洗浄により、速やかに炎症所見は改善した。処置後11日目に撮影した腹部造影CTでは右門脈の拡張は消失しており、門脈内膿瘍も認められなくなっていたため、ドレナージチューブを抜去し退院となった。
化膿性門脈炎は腹腔内感染症や骨盤内感染症に合併する比較的稀な疾患である。治療法は抗生剤の全身投与が基本であるが、広域スペクトラムの全身投与にも拘わらず門脈炎の改善が得られないことも多く、高い死亡率を示すことが知られている。本症例では門脈内へのドレナージチューブ留置により、速やかに門脈内膿瘍を除去することができ、炎症所見の改善に繋がった。化膿性門脈炎に対する経皮的ドレナージ術は、報告例が少ないためコンセンサスが得られている治療法ではないが、本症例のように膿瘍が門脈内に充満している例では、抗生剤の投与に加えて速やかな排膿が炎症の改善に有用であると考えられ、若干の文献的考察を加えて報告する。
索引用語 化膿性門脈炎, 経皮的ドレナージ術