セッション情報 ポスターセッション(消化器病学会)

肝臓(症例報告)

タイトル 消P-95:

肝胆道系酵素の上昇を認め診断に苦慮した粟粒結核の一剖検例

演者 中村 有希(中国労災病院・内科)
共同演者 守屋 尚(中国労災病院・内科), 吉福 良公(中国労災病院・内科), 藤野 初江(中国労災病院・内科), 北村 正輔(中国労災病院・内科), 岡信 秀治(中国労災病院・内科), 久賀 祥男(中国労災病院・内科), 大屋 敏秀(中国労災病院・内科), 酒井 浩(中国労災病院・心臓血管外科), 西田 俊博(中国労災病院・病理科), 桑原 利江子(康成病院)
抄録 肝胆道系酵素と炎症反応の上昇を認め急性胆嚢炎と診断し加療を開始したが改善せず、剖検にて粟粒結核と診断された貴重な症例を経験したので報告する。症例は82歳男性。発熱と食欲不振と背部痛を主訴に近医を受診した。AST325IU/L,ALT226IU/L,ALP512IU/L,CRP17.7mg/dl,WBC4200/μlと肝胆道系酵素の上昇と炎症反応の上昇を認め抗生剤を投与したが改善しないため当院へ紹介となった。入院時のCTで胆嚢腫大と周囲脂肪織濃度上昇を認め、腹部エコーで胆嚢腫大と胆嚢壁肥厚を認めたため急性胆嚢炎と診断しPTGBDを施行した。胆汁培養は陰性のため他の原因検索を行った。また左胸水および左下葉の無気肺を認めたが肺野には異常を認めず、造影CTでは腹部大動脈の背側に血腫を認め大動脈潰瘍からの出血と考えられた。大動脈潰瘍の感染を疑い血液培養を繰り返したが陰性、痰培養や尿培養も陰性で感染源が特定できなかった。その後も炎症反応と肝胆道系酵素の上昇は持続し、ARDSとなり第8病日に死亡した。剖検で腹部大動脈潰瘍からの出血に一致して胸椎に骨破壊を認め、病理組織では大動脈と脊椎からラングハンス巨細胞と乾酪壊死を認めた。同所見が肝臓、脾臓、肺にもびまん性に認められた。以上の所見から、脊椎カリエスが大動脈に浸潤し大動脈潰瘍を形成して出血が起こり粟粒結核となりARDSのため死亡したと考えられた。粟粒結核は初期には特異的な症状がなく発見が遅れることが多く、喀痰塗沫の陽性率も50%未満であり診断が困難な場合が多い。一方、肝生検による粟粒結核の診断率は100%との報告がありALPの上昇を伴うことが多く、初期には急性胆嚢炎と診断されていた報告もある。本例では肺病変がなく生前には粟粒結核の診断には至らなかったが原因不明の肝胆道系酵素の上昇を伴っており、肝生検を行っていれば確定診断に至った可能性が高い。
索引用語 粟粒結核, 肝生検