セッション情報 ポスターセッション(消化器病学会)

肝臓(症例報告)

タイトル 消P-97:

急速に発育した非アルコール性脂肪肝炎合併糖尿病患者に発症した肝細胞癌の1例

演者 一條 哲也(安曇野赤十字病院・消化器内科)
共同演者 須藤 貴森(安曇野赤十字病院・消化器内科), 望月 太郎(安曇野赤十字病院・消化器内科), 清水 明(信州大・消化器外科), 横山 隆秀(信州大・消化器外科), 小林 聡(信州大・消化器外科), 宮川 眞一(信州大・消化器外科)
抄録 【緒言】近年糖尿病患者にNAFLD罹患者が多く、肝癌発生率が高いことが報告されている。NASH起因の肝癌の病態や発生機序には不明な点が多い。NASH診断2年後に急速に発育した肝癌症例を経験した。【症例】症例は67歳男性。BMI29.4。飲酒歴なし。5年前より高血圧症、糖尿病にて内服加療中。2年前に肝障害で当科紹介となり、血液検査と肝生検よりNASH(NASscore 5,fibrosis3)と診断。減量と経口糖尿病薬にて加療された。2011年8月の腹部US検査では異常を認めなかった。AFP値は10前後で推移していたが、PIVKA-II値が17から242と急上昇を認めた。9月の腹部CTでは、肝S6に30mm大の早期に不均一に染まり、後期相で周囲肝より低吸収を示す結節を認めた。再度USを施行したところ一部肝裏面へ突出するハローを伴うSOLを認め、EOB-MRIでは、T2WIでは周囲肝とほぼ等信号、拡散強調像にて不均一な高信号、T1WIにて軽度低信号、造影早期に不均一に染まり、肝細胞相では造影欠損を呈した。総合的にHCCと診断した。治療は、肝予備能が保たれ3cm超の単発で、肝裏面へ突出する形態より肝切除を選択した。腹腔鏡補助下肝S6系的切除術を施行した。術後診断では単純結節型肝細胞癌、Stage IIであった。組織像は高分化~中分化型肝細胞癌で被膜浸潤は認めなかった。背景肝は、完成した再生結節を認めるが、門脈域等の炎症細胞浸潤は軽度でA1F4の肝硬変であった。【考察】NASHによるHCCの発症はインスリン抵抗性、高インスリン血症を背景に複数の因子が関与して生じると報告されている。本例は、インスリン抵抗性を認めた。糖尿病治療はSU剤主体であったが、食事療法や減量のコントロールが不良で発がんの誘因となった可能性がある。今回、HCCが急速に増大した誘因は、組織学的には明らかではない。インスリンの過分泌抑制がHCCのdoubling timeを延長させることから、本症例の急速なHCC発育にはインスリン抵抗性によるインスリン過分泌が影響したと示唆された。
索引用語 NASH, 肝細胞癌