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司会の言葉
 
 本パネルディスカッションでは,AIHとPBC診療における臨床的な現状と問題点について発表頂きたい.AIHでは自己抗体陰性やIgG正常といった非定型例が存在し,急性肝炎期例の診断も含め,新たな疾患標識マーカーやその対応が課題である.また,劇症化例は予後不良であり,早期治療介入も含めその対応が急務である.一方で軽症例や高齢発症例の取り扱い,ステロイド中止可能例などの論点も想定される.PBCでは自己抗...

第99回日本消化器病学会総会自己免疫性肝疾患の現状と問題点

免疫学的末梢血解析からみた自己免疫性肝炎の病態
海老沼 浩利(慶應義塾大学医学部消化器内科)
【背景と目的】自己免疫性肝炎(AIH)は中年女性に好発し,通常は慢性肝炎の経過を辿る.免疫抑制療法が著効することから,原因として何らかの自己免疫学的機序が関与していると推察されるがその詳細は解明されていない.AIHの中には亜急性に経過し,肝不全に移行する急性発症型AIH(AAIH)が存在し,このAAIHでは末梢血中制御性T細胞(Treg)の割合が低く,Th17細胞の割合が多いことを今までに報告して...

第99回日本消化器病学会総会自己免疫性肝疾患の現状と問題点

急性肝炎期自己免疫性肝炎の臨床像
山崎 大(手稲渓仁会病院消化器病センター)
【目的】自己免疫性肝炎(AIH)には,急性発症様の病型(急性肝炎期[AH]と急性増悪[AE])も存在し,特にAHでは非定型例が多く,診断に苦慮することが多い.急性肝炎期AIHの臨床像を明らかにすることを目的とした.【方法】1995年1月から2012年8月までに,当センターにて臨床的かつ病理学的にAIHと診断した122例(年齢55.2±14.0,男女比19:103)を対象とした.急性発症様の定義は,...

第99回日本消化器病学会総会自己免疫性肝疾患の現状と問題点

自己免疫性肝炎非典型例の診断における血清中抗PD-1抗体の有用性
三宅 康広(岡山大学病院消化器内科)
【目的】近年,抑制性の補助刺激分子であるprogrammed cell death(PD)-1の機能不全が自己免疫性肝炎(AIH)の病態に関与している可能性が報告されている.また,我々は,AIH患者の血清中に抗PD-1抗体が存在し,血清中抗PD-1抗体がAIH患者の疾患活動性やステロイド剤に対する治療反応性と関連することを報告してきた.今回は,非典型例とされるAIH例の診断における血清中抗PD-1...

第99回日本消化器病学会総会自己免疫性肝疾患の現状と問題点

自己免疫性肝炎軽症例の臨床像と治療
高橋 宏樹(東京慈恵会医科大学大学院消化器内科)
【目的】近年ALT値が比較的低値の自己免疫性肝炎(AIH)症例の存在が注目されているが,軽症AIH症例の明確な定義はなく,どのような症例を軽症例とみなし,いかなる治療を行うべきか明らかでない.この課題の解決を目的に以下の検討を行った.【方法】当科で臨床病理学的にAIHと診断された224例を対象とした.診断時ALT値が基準値上限の何倍かにより群別けし(~2倍:2倍群,…,10倍~:10倍以上群),各...

第99回日本消化器病学会総会自己免疫性肝疾患の現状と問題点

治療中止可能な自己免疫性肝炎の特徴
有永 照子(久留米大学医学部内科学講座消化器内科部門)
【目的】自己免疫性肝炎(AIH)はコルチコステロイド(CS)による治療が標準的な治療である.治療効果は概ね良好であるが再燃も多い.再燃回数が多ければ肝硬変への進行,肝癌の発症が多いことが報告されておりCS量の減量や中止には慎重にならざるを得ない.一方,長期CS治療による副作用も問題であり,特に感染症や骨粗鬆症には注意が必要である.そこで,今回AIHで治療中止可能な症例の特徴を明らかにするために最終...

第99回日本消化器病学会総会自己免疫性肝疾患の現状と問題点

高齢者自己免疫性肝炎の臨床病理学的特徴と治療上の問題点
守屋 圭(奈良県立医科大学第3内科)
【目的】近年,本邦では欧米諸国と比較して高齢の自己免疫性肝炎(AIH)患者が多く報告されている.大部分の症例にはステロイド治療が奏効するが,高齢者は耐糖能障害など様々な合併症を有していることが多く,積極的な治療介入を躊躇することも少なくない.今回我々は,当科で経験したAIH症例を診断時の年齢が65歳未満の非高齢者と65歳以上の高齢者に分け,高齢者AIH患者の臨床病理学的特徴と治療上の問題点について...

第99回日本消化器病学会総会自己免疫性肝疾患の現状と問題点

NASHを合併した自己免疫性肝炎に関する検討
高橋 敦史(福島県立医科大学消化器・リウマチ膠原病内科学)
【背景】自己免疫性肝炎(AIH)の診断では,抗核抗体が約3割で陽性となる非アルコール性脂肪性肝疾患(NASH)との鑑別が必要で,まれにAIHとNASHのオーバーラップの症例も経験する.我々はこれまでNASH患者のAIH合併について報告したが,AIHでのNASH合併に関しては不明な点が多い.【目的】AIH診断時におけるNASH合併の有無とその特徴を明らかにする.【方法】AIH改訂版国際診断基準または...

第99回日本消化器病学会総会自己免疫性肝疾患の現状と問題点

原発性胆汁性肝硬変の障害胆管におけるエネルギー代謝の変化
原田 憲一(金沢大学大学院医学系研究科形態機能病理)
【目的】原発性胆汁性胆管硬変(PBC)は中高年女性に好発し,ピルピン酸脱水素酵素(PDC)を対応抗原とするAMAの出現,肝内小型胆管における慢性胆管炎と胆管消失が特徴である.PDC複合体はミトコンドリア内でピルピン酸からアセチルCoAへと変換する酵素で,解糖系エネルギー代謝系の重要な酵素である.今回,PBCのCNSDC特異的に,解糖系エネルギー代謝の障害およびPPARγ coactivator 1...

第99回日本消化器病学会総会自己免疫性肝疾患の現状と問題点

原発性胆汁性肝硬変において抗セントロメア抗体と抗M2抗体はbezafibrate投与による治療反応性と関連する
福嶋 伸良(九州医療センター消化器科・臨床研究センター)
【目的】本邦では原発性胆汁性肝硬変(PBC)に対し,Ursoに加えbezafibrateも使用される.これらの薬剤による治療反応性と各種自己抗体に関連があるか検討した.
【方法】Ursoおよびbezafibrateに対する反応性が判断可能であったPBC患者,それぞれ74例と29例について検討した.Bezafibrateは全てUrsoへの追加投与だった.薬剤によるAST,ALP,γGTP,Ig...

第99回日本消化器病学会総会自己免疫性肝疾患の現状と問題点

PBCに対する薬物治療方針の現状~アンケート調査の結果から~
田中 篤(帝京大学医学部内科学講座)
【目的】2012年にPBC診療ガイドラインが発表され,第1選択薬はウルソデオキシコール酸(UDCA)とされている.しかし薬物治療の対象,UDCA効果判定の時期・基準,効果不良例に対する治療方針など,未だ十分なエビデンスやコンセンサスがない領域が存在する.今回われわれは本邦の肝専門医を対象としてPBCに対する薬物治療の現状を把握するためアンケート調査を行った.【方法】本調査は厚労省「難治性の肝・胆道...

第99回日本消化器病学会総会自己免疫性肝疾患の現状と問題点