- 司会の言葉
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小腸は我々の体中で,栄養素の消化吸収代謝器官であるとともに,規模の大きい免疫器官あるいは神経内分泌器官としての重要な役割を有している.すなわち外界からの多くの情報は小腸を介して全身に伝達され,そのため小腸は生命維持に必須の司令塔として機能していると言える.一方,小腸機能は代償機構が発達しており,その再生力も強いことより,傷害が認識されにくい特徴がある.しかし,近年は小腸疾患の病態生理に関して新し...
第99回日本消化器病学会総会 >
小腸病変の診断と治療の進歩
- NSAIDs起因性小腸傷害を活性酸素産生の観点から可視化する
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金子 剛(筑波大学消化器内科)
【目的】本研究の目的はNSAIDs起因性小腸傷害のメカニズムを解明することである.本研究ではA)同傷害を経時的に捕捉するために,マウス小腸粘膜をリアルタイム観察可能な実験系を構築する.B)同傷害の機序を培養細胞系にて検討,その予防・治療法を提案する.【方法】A)ICRマウスを麻酔下に開腹し,indomethacinを投与前後において小腸粘膜をリアルタイムに観察する.この際白色光の観察のみならず,i...
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小腸病変の診断と治療の進歩
- NSAIDs惹起性小腸潰瘍に対するToll-like receptor 2を介した治療法の検討
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成松 和幸(防衛医科大学校内科2)
背景:非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)は一般診療で汎用される薬剤であり,その使用頻度は高い.また,副作用のひとつである腸管粘膜障害,特に小腸潰瘍に関してはカプセル内視鏡やダブルバルーン小腸鏡の普及でその頻度は比較的多いことが報告されているが,その治療については効果のある薬剤がいくつか報告されているものの十分でないのが現状である.NSAIDsが小腸粘膜障害を起こす機序として,プロスタグランジン...
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小腸病変の診断と治療の進歩
- 非ステロイド系消炎鎮痛剤(NSAIDs)起因性小腸粘膜傷害の病態と予防法の検討
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倉本 貴典(大阪医科大学第2内科)
【目的】NSAIDsは胃のみならず小腸においても粘膜傷害を惹起することが知られているが,酸の関与のない小腸粘膜傷害の病態や傷害に対する予防法については未だ明らかでない点が多く,動物実験において酸分泌抑制薬はNSAIDs起因性小腸傷害を悪化させるとの報告もある.我々は,基礎研究にて有効性が証明された薬剤に関してボランティアを対象とした臨床試験を行った.
【方法】防御因子増強剤のgeranylg...
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小腸病変の診断と治療の進歩
- 小腸病変を有するクローン病の内視鏡スコアの検討~粘膜病変に主眼をおいて~
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馬場 重樹(滋賀医科大学消化器内科)
【目的】クローン病の内視鏡スコアとしてCDEISやSES-CDが用いられているが,評価法が複雑で,大腸病変に重点があり小腸内視鏡検査が普及した現状にそぐわない.一方で,生物学的製剤の登場により粘膜治癒が重要視されている.今回,我々は術後再発の粘膜評価に用いられるRutgeerts’ Scoreを改変した粘膜評価法(Modified Rutgeerts’ Score:MRS)を用いてクローン病小腸病...
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小腸病変の診断と治療の進歩
- クローン病小腸病変の新規画像診断法の検討
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野口 篤志(大阪市立大学消化器内科学)
【目的】小腸病変の診断において本邦で開発されたバルーン小腸内視鏡の寄与は大きかったが,クローン病(CD)においては癒着や狭窄で深部挿入困難な症例が存在する.高精度な画像診断を目的に各種新規診断法を検討した.【方法】CD患者に対し,シングルバルーン小腸内視鏡(SBE)併用福大筑紫式小腸X線造影チューブ(SBE-T),極細径下部消化管内視鏡(PCF-PQ260I),パテンシーカプセル(PPC)前検査に...
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小腸病変の診断と治療の進歩
- クローン病初回診断時におけるCT enterographyの有用性について
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大花 正也(天理よろづ相談所病院内視鏡センター)
【目的】CT enterography(CTE)は比較的低侵襲に病変の局在,性状を評価可能な小腸検査法である.我々はCTEによる日本人クローン病(CD)小腸病変評価の有用性を報告してきた(日消誌109巻).その後症例を蓄積し,CD初回診断時におけるCTEの有用性について検討した.【方法】2009年9月から2012年8月までの3年間に当院ではPEG-ES(ニフレックR)を腸管拡...
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小腸病変の診断と治療の進歩
- クローン病の再燃予測におけるMR enterocolonography(MREC)の有用性
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藤井 俊光(東京医科歯科大学消化器内科)
【目的】クローン病(CD)の病変評価には造影検査や内視鏡などを施行しているが,被爆や苦痛,また狭窄や癒着による検査の制限などの問題がある.近年CDの腸管病変に対してCTやMRI等の非侵襲的な画像診断が注目されている.MRIは腸管粘膜だけではなく壁や壁外の情報も得られ,瘻孔や膿瘍も含めより的確に活動性を評価できる可能性がある.われわれはこれまでCDの小腸大腸病変の同時評価法としてMR enteroc...
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小腸病変の診断と治療の進歩
- 小腸出血性疾患診断における便中hemoglobin-haptoglobin complex測定の有用性
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垂水 研一(川崎医科大学消化管内科学)
【目的】大腸癌検診に用いられている免疫学的便潜血検査Immunologic fecal occult blood test(IFOBT)は,糞便中Hemoglobin(Hb)の抗原性の失活により,上部消化管および小腸の少量出血では偽陰性を来す危険性がある.一方,Hb-haptoglobin complex(Hb-Hp complex)は安定性が高く,出血を来す上部消化管や小腸疾患の診断においてその...
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小腸病変の診断と治療の進歩
- 慢性腎不全患者における小腸病変の特徴とリスクファクターに関する検討
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江塚 明子(横浜労災病院消化器内科)
【目的】慢性腎不全(CKD)患者において鉄欠乏性貧血および原因不明消化管出血(OGIB)はしばしば起こる合併症である.これまでは大量出血を来した症例を除き,保存的に経過を診ることが多かったが,これらの症状は繰り返すことが多く,時に治療に難渋する.カプセル内視鏡(CE)の普及に伴って,OGIBに対して積極的に小腸病変の検索が行われるようになってきたが,CKD患者における小腸病変に関する詳細な報告は少...
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小腸病変の診断と治療の進歩
- カプセル内視鏡検査による門脈圧亢進症性小腸症(PHE)所見と,臨床背景の検討
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加賀谷 尚史(金沢大学消化器内科学)
【目的】我々はこれまでに,肝硬変症に伴う小腸病変の検討を行い,対照群と比してLC群において,edema,erythema,telangiectasias,angioectasia like lesionsを有意に多く認めるが,食道胃静脈瘤の有無や肝予備能との相関についてはさらなる検討が必要であることを報告してきた(Gastroenterological endoscopy, 2011).その後にさ...
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小腸病変の診断と治療の進歩
- 蛋白漏出性腸症を来す腸リンパ管拡張症の病態分類の有用性
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大宮 直木(名古屋大学大学院消化器内科学)
【目的】内視鏡画像・病理所見より腸リンパ管拡張症の病態を分類し,臨床的有用性を検討する.【対象】2003年6月~2012年9月に糞便中α1-アンチトリプシンクリアランス(Cα1-AT)または蛋白漏出シンチグラフィで蛋白漏出性腸症と診断され,ダブルバルーン内視鏡(DBE)下生検・剖検で腸リンパ管拡張症と診断された13例(男性7例・女性6例,年齢40±23歳).続発性は4例(SLE,原発性マクログロブ...
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小腸病変の診断と治療の進歩
- ダブルバルーン内視鏡による小腸癌の診断
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鈴木 将大(日本医科大学消化器内科学)
【背景】小腸バルーン内視鏡(Balloon-assisted endoscopy:BAE)が,日常臨床で使用されて10年近くが経過し,小腸癌では,BAEによる術前組織診断も可能となったが,一方で,診断された時には進行癌であることも多く,現状でBAEを施行した小腸癌の予後に関しては不明な点も多い.
【目的】バルーン内視鏡が行われた小腸癌症例の診断経緯,他の画像診断,内視鏡所見,病理診断や生存期...
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小腸病変の診断と治療の進歩
- 小腸濾胞性リンパ腫の至適治療:リツキシマブ治療を中心に
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中村 昌太郎(九州大学先端医療イノベーションセンター)
【目的】小腸濾胞性リンパ腫(follicular lymphoma,FL)の治療方針を検討する.【方法】当施設で診断した消化管FLのうち,バルーン内視鏡またはカプセル内視鏡で小腸病変の有無を確認した50例(男23例,女27例;平均年齢60.7歳)を対象とした.全例でt(14;18)/IgH-BCL2転座を蛍光in situハイブリダイゼーションで検索し,臨床病理学的特徴...
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