- 機能性消化管障害の病態研究最前線
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本郷 道夫(公立黒川病院, 東北大病院・総合診療部)
慢性的に消化器症状がありながら、症状の原因となる客観的所見を同定できない病態を機能性消化管障害と呼び、Rome財団による組織的系統的検討が始まって20年あまりが過ぎた。系統的研究が始まるまでは、「気持ちの持ちよう」「患者の不満の表現形」といった捉え方が多かった。そのため、神経性胃炎や神経性大腸炎といった呼称が用いられた時期がある。一方で消化器症状発現の客観的機序の説明として消化管運動機能異常に対す...
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機能性消化管障害の病態と治療
- 過敏性腸症候群における内臓刺激時の局所脳活動と神経内分泌反応に対するcorticotropin-releasing hormoneの増強作用
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田中 由佳里(東北大大学院・行動医学)
【目的】過敏性腸症候群(IBS)ではストレスの鍵物質であるcorticotropin-releasing hormone(CRH)が病態に深く関わっているとされる。我々は、CRHが内臓知覚過敏を誘発し、健常者へのCRH負荷はIBS類似の内臓刺激下局所脳活動を呈したと報告した。そこで、CRH投与によりIBS患者はこれらの異常反応を呈するという仮説を検証した。【方法】対象は健常男性16名、IBS男性1...
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機能性消化管障害の病態と治療
- 過敏性腸症候群における脳腸ペプチドの遺伝子多型の解析
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鳥谷 洋右(岩手医大・消化器・肝臓内科)
【背景】脳腸ペプチドのcarcitonin gene related peptide (CGRP),内臓知覚と関係があるtransient receptor potential vanilloid -1 (TRPV1)および胃の運動機能に影響していると考えられているTranscription factor 7-like 2 (TCF7L2)と消化管機能異常との相関については明らかにされていない.【...
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機能性消化管障害の病態と治療
- 大腸鏡・CTコロノグラフィーから見た過敏性腸症候群(IBS)の病態と治療選択
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水上 健(国立久里浜医療センター・内科)
IBSの病態は脳腸相関異常・知覚過敏・腸管運動異常とされ、大腸検査で器質的異常がないこととされるが近年は器質的疾患除外のためIBS診断・治療過程で大腸鏡を施行されることが多い。これまで我々は鎮痙剤により正常者の腸管運動を抑制して大腸鏡を施行すると「大腸鏡」自体の心理的負荷でIBSの遷延性腸管運動異常が惹起され下痢型のほとんどに遷延する蠕動が、便秘型 の一部に遷延する分節型運動が見出されたことを報告...
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機能性消化管障害の病態と治療
- 腸電図を用いた非侵襲的大腸運動機能評価法の確立
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矢野 弘美(徳島大大学院ヘルスバイオサイエンス研究部・消化器内科学)
【目的】過敏性腸症候群を始めとする機能性消化管障害の病態解明に基づく新薬の開発が進み、客観的指標による病態評価および治療効果判定の必要性が高まっている。しかし、機能性消化管障害に対する検査は、X線マーカー法、内圧測定法、バロスタット法、Functional MRIなどが行われ、簡便かつ非侵襲的に施行することは困難である。今回我々は、腸電図を用いて大腸活動電位を測定することにより、簡便かつ非侵襲的に...
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機能性消化管障害の病態と治療
- 慢性偽性腸閉塞の腸管蠕動評価におけるシネMRIの有用性
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大久保 秀則(横浜市立大・消化器内科)
【目的】これまでシネMRIは絞扼性イレウスや腸管癒着の診断など、下部消化管の器質的疾患への有用性が報告されているが、機能的異常の診断への有用性は報告が少ない。今回、下部消化管機能性異常の中で最も重篤である慢性偽性腸閉塞(CIPO)症例を対象に、シネMRIを用いた腸管蠕動評価の有用性を検討した。【方法】厚労省診断基準を満たすMRI禁忌のないCIPO患者10人と健常者10人に対してシネMRIを施行。撮...
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機能性消化管障害の病態と治療
- ディスペプシア症状発現における幼少期虐待歴の関与
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大島 忠之(兵庫医大・内科(上部消化管科))
【目的】機能性消化管障害(FIGD)の病態生理は依然明らかでないが,その発症要因として社会心理的因子の関与が指摘されている.過敏性腸症候群においては性的虐待歴がその発症に関連していることが報告されているが,機能性ディスペプシア(FD)の発症における被虐待歴の関与はこれまで全く報告がない.そこで今回我々は,被虐待歴の頻度とディスペプシア症状発現における被虐待歴の関与を検討した.【方法】本調査は全国の...
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機能性消化管障害の病態と治療
- 機能性ディスペプシアとHP感染
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白枝 久和(金沢医大・消化器内科)
内視鏡的胃炎と組織学的胃炎とディスペプシア症状にギャップが存在することを日常経験するように、胃の炎症は必ずしも症状を誘発するわけではない。胃の炎症の原因の大部分をしめるH. pylori(HP)感染に関しても、多くのメタ解析の結果は除菌のディスペプシア症状への関与は有意ではあるが僅かであることを示している。では、ディスペプシアの対応にHP感染を考慮しなくてよいのであろうか?我々はこれまでFDのCa...
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機能性消化管障害の病態と治療
- 機能性消化管障害患者におけるQOLと血中活性型GLP-1濃度の関連
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伊藤 実(久留米大・消化器内科)
【目的】機能性消化管障害(FGIDs)患者は多彩な消化器症状を呈するため、簡易にQOLに関与する消化器症状を評価できる出雲スケールが用いられている。Glucagon-like peptide-1(GLP-1)は脳腸ホルモンとして胃排泄能や食欲の低下に関与することが報告されている。FGIDsの症状には様々な消化管ホルモンが関与することが知られているが、GLP-1との関連は不明である。本研究の目的はF...
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機能性消化管障害の病態と治療
- FD患者における睡眠障害と臨床症状および胃排出能との相関関係の解析-nizatidineによるcross-over試験の試み-
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二神 生爾(日本医大・消化器内科)
(背景・目的)機能性ディスペプシア(FD)患者は、随伴症状としてのGERD・IBS症状を比較的高率に合併していることが知られている。実際、我々の報告でもFD患者、NERD患者は胃排出能の障害を、それぞれ30%程度合併している(Shindo T, et al. Digestion, 2009)。NERDの逆流症状と睡眠障害の相関関係は、近年注目を浴びているが、FD患者の睡眠障害の詳細や消化管運動機能...
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機能性消化管障害の病態と治療
- FDの治療効果評価基準とQOL(背景因子、治療改善度)に関する検討. - JMMSからの知見 -
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中田 浩二(東京慈恵会医大・外科)
FDの治療効果の評価にはさまざまな基準が用いられているが、その妥当性は十分に示されていない。またFD患者ではQOLの低下がみられるが、その背景因子や治療改善度の詳細は不明である。【目的】JMMS〔FD疑診患者を対象とした全国規模の臨床比較試験;胃もたれ、胃の痛みが2週間以上続く適格患者を各投薬群(モサプリド[M]311例、テプレノン製剤[T]307例)に割付〕において上記を検討する。【方法】(1)...
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- 機能性胃腸症と胃食道逆流症における上部消化管酸環境の差異
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眞部 紀明(川崎医大・内視鏡・超音波センター)
【背景】機能性胃腸症(FD)の20~30%に胃食道逆流症(GERD)が合併するが,FDに対する胃酸分泌抑制治療効果はGERDと比較すると低い.これまでにFD患者の食道入口部から十二指腸下降脚までの各pHを同時に測定した報告はなく,またFDとGERDのpH profileを比較検討した報告もない.【目的】GERDとFDのpH profileの差異を比較検討した.【対象】当院および関連施設でディスペプ...
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機能性消化管障害の病態と治療
- 腸管炎症によるserotonin reuptake transporterの遺伝子発現制御と機能性消化管障害の病態への関与
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多田 育賢(島根大・2内科)
(背景と目的)近年、腸管感染症が誘因となって過敏性腸症候群(IBS)や機能性デイスペプシア(FD)が発症することが報告され、機能性消化管障害(FGIDs)の病態に炎症が関わる可能性が示唆されている。しかし、その詳細な病態は不明な点が多く、特にセロトニン代謝との関連は明らかにされていない。我々は、serotonin reuptake transporter (SERT)に着目し、腸管炎症時および回復...
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機能性消化管障害の病態と治療
- H.pylori感染による、胃上皮TRPV4イオンチャネルのメチル化が、胃機能異常の原因になり得る
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三原 弘(富山大大学院・3内科学, 生理学研究所岡崎統合バイオサイエンスセンター・細胞生理研究部門)
背景・目的:機能性ディスペプシアの病態には適応性弛緩が関与している。TRPV4イオンチャネルは、温度、機械刺激などによって活性化される非選択的陽イオンチャネルで、食道、結腸上皮などに発現しているが、胃上皮での発現及び機能は未検討である。また、TRPV4の遺伝子プロモータ-領域には、CpG islandが存在し、DNAメチル化により発現制御を受けている可能性がある。最近H.pylori感染が、胃粘膜...
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- ストレス関連ペプチドの消化管機能抑制について ―脳-腸相関の観点から―
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大野 志乃(埼玉医大総合医療センター・消化器・肝臓内科)
【目的】機能性ディスペプシア(FD)の病態として胃適応性弛緩や排出能などの運動機能低下や早期飽満感による食欲低下などが報告されている。これまでFDの病態には心理的ストレスの関与が示唆されているが、演者らはFDの病態を明らかにするためにストレス関連ペプチドCRFの受容体アゴニストであるウロコルチン1(UCN1)をラット脳室内投与(ICV)して、胃酸分泌と胃運動能、食欲の変化とグレリンの動態への影響に...
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- グレリンシグナルの低下がGERDにおける胃排出低下に関与する
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武田 宏司(北海道大大学院・薬学研究院臨床病態解析学)
【目的】胃食道逆流症 (GERD) の発症・進展と消化管運動との関連性は、いまだ十分な結論を得られていないが、一部のGERD患者では胃排出が低下し、それが酸逆流に関与することが推察されている。グレリンは、胃で産生される強力な食欲増進ホルモンであり、強力な消化管運動亢進作用を有することが知られている。我々はラットGERDモデルにおいて、上部消化管の運動異常にグレリンシグナルの異常が関与しているかを検...
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