- 司会の言葉
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福土 審(東北大学行動医学)
過敏性腸症候群(irritable bowel syndrome:IBS)の臨床的重要性は日に日に高まっている.その頻度の高さ,患者quality of lifeの障害,医療経済といった実地臨床の側面だけでなく,ゲノム,脳腸ペプチド,消化管運動,内臓知覚,消化管免疫,腸内細菌,バイオマーカー,脳機能画像,心理社会的因子などの多方面にわたる病態生理が研究され,しかもそれらが単にIBSの病態理解だけ...
第100回日本消化器病学会総会 >
IBS病態研究の進歩と本邦における臨床実態―ベンチからベッドサイドまで
- 過敏性腸症候群病態研究の進歩と臨床実態
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福土 審(東北大学行動医学)
過敏性腸症候群(irritable bowel syndrome;IBS)の発生機序は未だ完全には解明されていない.しかし,消化管生理学,脳画像,免疫学,細菌学,遺伝学,臨床疫学,心身医学の集学的動員により,IBSの脳腸相関の病態追求が進み,治療法も進歩し続けていることも事実である.IBSの病態生理として,中枢機能と消化管機能の関連(脳腸相関)が重視されている.脳腸相関の病態の詳細は,主に消化管...
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IBS病態研究の進歩と本邦における臨床実態―ベンチからベッドサイドまで
- 消化管運動測定法の進歩:シネMRIを用いた検討から
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大久保 秀則(横浜市立大学消化器内科)
過敏性腸症候群(IBS)は,有病率15%にも及ぶcommon diseaseであるものの,治療満足度は低く,身体面・精神面・社会面での著しいQOL低下から社会生産性の大きな損失と医療経済面への多大な負担を招いている.その病態生理は依然として混沌としているが,脳科学,消化管生理学,細菌学,心身医学など様々な分野からのアプローチが進んでいる.特に近年,様々なモダリティの発展により,「消化管運動」という...
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IBS病態研究の進歩と本邦における臨床実態―ベンチからベッドサイドまで
- 過敏性腸症候群における脳腸ペプチドの遺伝子多型の解析
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千葉 俊美(岩手医科大学消化器内科消化管内科)
【背景】脳腸ペプチドのcarcitonin gene related peptide(CGRP),内臓知覚と関係があるtransient receptor potential vanilloid-1(TRPV1)および胃の運動機能に影響していると考えられている.Transcription factor 7-like 2(TCF7L2)と消化管機能異常との相関については明らかでない.【目的】CGRP...
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- 下痢型過敏性腸症候群(IBS-D)に対するラモセトロン有効性に関するS100タンパクおよびTryptophan hydroxylase(TpH)-1の検討
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塩谷 昭子(川崎医科大学消化管内科学)
【背景】S100A10(p11)が下痢型IBS(IBS-D)の病態に関与し,5-HTTLPR del(s)ホモ保有者は,5HT3拮抗薬(ラモセトロン)の奏効率が高いことを以前に報告した.【目的】S100A10の発現およびTryptophan hydroxylase(TpH)-1遺伝子多型とラモセトロン有効性について検討した.【方法】IBS-Dを対象に,ラモセトロン2.5μg錠 2錠/日)を1か月間...
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- IBSモデルにおける大腸グリア細胞の形態変化と大腸運動機能への影響
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藤川 佳子(大阪市立大学大学院医学研究科消化器内科学)
【目的】IBSでは「下部消化管内視鏡で異常が無い」という概念は今や過去のものとされ,ストレスによる腸管神経系システムへの異常応答を含め,組織学的変化が注目されつつある.IBSモデルとされる母子分離ストレス(maternal separation:MS)ラットを用いて,大腸筋層間神経叢にあるグリア細胞(enteric glial cell;EGC)の形態変化と経壁電気刺激(electrical fi...
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IBS病態研究の進歩と本邦における臨床実態―ベンチからベッドサイドまで
- ヒト樹状細胞および腸内細菌叢の過敏性腸症候群への病態関与
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小井戸 薫雄(東京慈恵会医科大学消化器・肝臓内科)
【目的】Corticotropin-releasing hormone(CRH)やurocortin(UCN)は,腸管運動を亢進させる作用があるため,過敏性腸症候群(irritable bowel syndrome,IBS)の病態に関与していると考えられている.また,消化管は常に腸内細菌叢にさらされているため,消化管免疫システムを備えている.そこで,CRHやUCNと抗原提示細胞である樹状細胞や腸内...
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- IBSにおけるカプセル内視鏡を用いた新たな病態評価の試み
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橋本 真一(山口大学消化器病態内科学)
【目的】IBSの診断や病状判定は症状に依存する割合が大きく,客観的にIBSの病態評価を可能とする検査手技の確立が望まれている.既存の腸管機能検査は,侵襲が高いものや実施可能な施設が限られていることも多く,消化管全体の評価も困難である.カプセル内視鏡は小腸全体の情報を低侵襲に得ることが可能であり,腸管粘膜面の情報だけでなく,カプセルの移動速度や,腸管内残渣およびその局在も把握することが可能である.カ...
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IBS病態研究の進歩と本邦における臨床実態―ベンチからベッドサイドまで
- 過敏性腸症候群における大腸憩室の影響に関する検討
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山田 英司(横浜市立大学附属病院内視鏡センター)
【目的】食生活の欧米化に伴い大腸憩室症は増加している.大腸憩室は,腸管運動障害,慢性炎症,内臓知覚過敏との関連が指摘されている.これらの因子は,過敏性腸症候群(irritable bowel syndrome:IBS)のリスクと重複する点が多く,欧米に多い左側型憩室はIBSとの関連が指摘されている.一方,右側型憩室が多い本邦では大腸憩室症とIBSの関連についての報告はない.本研究ではIBSにおける...
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IBS病態研究の進歩と本邦における臨床実態―ベンチからベッドサイドまで
- 大腸画像検査を活用した機能性腸障害の診断と治療―病態説明と治療選択ツールとして―
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水上 健(国立病院機構久里浜医療センター内科)
過敏性腸症候群(IBS)の診断過程では約30%の患者が大腸鏡を経験する(JROAD-III 2010).従来の大腸画像検査の対象は腫瘍や炎症であり,苦労して検査を受けてもほとんどが「異常なし」となる.排便障害で著しく生活を制限されている患者にとって症状を説明できない検査結果は受け入れにくく,当院IBS・便秘外来患者の主たる受診動機は「検査で異常を指摘してもらうこと」である.これまで我々はIBS患者...
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- CTコロノグラフィーによる過敏性腸症候群の検討
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米野 和明(埼玉医科大学総合診療内科)
【目的】過敏性腸症候群(IBS)は機能性胃腸障害のひとつで,器質的疾患がないものの,さまざまな要因との関連が指摘されている.水上らはIBS患者に対してCTコロノグラフィーを用いた大腸の腸管形態異常を報告している.今回,われわれはIBS患者にいて大腸内視鏡検査終了後にCTコロノグラフィーを施行することにより大腸の形態について検討した.【対象と方法】対象はIBS-D患者(IBS-D群)6例とIBS-C...
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- 大腸CT検査により測定した大腸の長さと排便習慣に関する検討
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歌野 健一(福島県立医科大学会津医療センター小腸大腸肛門科)
【目的】経験豊富な大腸内視鏡医は,大腸の長さが排便習慣に関係すると直観できるが,従来,これを実証した報告はなかった.生体において大腸の長さを正確に測定するツールがなかったためである.しかし,大腸CT検査の登場により,CT撮影情報から大腸を立体的に再構築し,大腸の長さを正確に測定できるようになった.本研究では,大腸CT検査により測定した大腸の長さと排便習慣の関係について,他の交絡因子も含めて検討した...
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- 機能性消化管障害(FGID)の慢性特発性便秘症(CIC)・便秘型過敏性腸症候群(IBS-C)に対するルビプロストン(Lubi.)の選択基準とその有用性
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岩本 史光(山梨大学医学部第1内科)
【目的】2006年5月にRome IIIによりFD(B1a.B1b)・IBS(C1)やCIC(C3)が定義されたが,CICの治療は2012年11月にLubi.の登場まで,機械的・刺激性下剤しか治療選択がなかった.今回,CICおよびIBS-Cに対し,2013年3月採用後からLubi.の治療効果,選択基準を検討する.【方法】当院にて2009年6月から2013年10月までにFGIDと診断された361例中...
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- 機能性腸障害の実態調査
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大野 正芳(北海道大学消化器内科)
【背景】機能性腸障害は腹痛,不快感,便通異常などの症状が慢性,再発性に起こる疾患でFGIDsでは5つの疾患に分類されている.臨床的には診断が困難な場合が多く,RomeIII基準に基づいた機能性腸障害の有病率の報告は少ない.【目的】消化器科受診者での機能性腸障害の有病率を明らかにし,機能性腸障害と内視鏡所見との関連性を明らかにする.【方法】道内25施設の消化器科受診者を対象にRomeIIIの成人FG...
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- 過敏性腸症候群に合併した便排出障害について
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壬生 隆一(福岡山王病院外科)
(はじめに)過敏性腸症候群(IBS)では腹痛や腹部膨満感を便排出障害のためと考えるなど,排便に対する不満感が強く,残便感・肛門狭窄感・便柱狭小化などの症状に敏感であることが多い.また,IBSにおいては直腸感覚鋭敏化を指摘する論文も多く,直腸肛門機能障害を合併していることが多い.しかし,IBSに合併した便排出障害(OO)はIBSを合併しないOOと違いがあるかどうかの報告はない.今回,IBSにOOを合...
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- 発症年齢からみた併存疾患―大学心療内科外来受診者での検討―
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金子 宏(星ヶ丘マタニティ病院内科)
【背景】過敏性腸症候群(IBS)に精神的偏倚(精神疾患)が高率に併存すること,また併存するうつや不安状態が受診行動に関与することが報告されている.一方,精神疾患が併存している場合は通常治療に抵抗することが高率で,難治例は心療内科を含む専門施設で診療されることが多い.しかし,受診時における併存疾患を発症年齢から検討した報告は見られない.発症年齢が低いほど併存疾患が多く,重篤であるという仮説を検証した...
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