セッション

検索結果は16件です。

司会の言葉
前原 喜彦(九州大学消化器・総合外科)
 最近,次世代シーケンスなどの遺伝子解析技術の発展により癌の分子病態学が著しく進歩している.たとえば大腸癌では,Wnt signal pathwayやEGFR‐MAP kinase pathwayの活性化,マイクロサテライト不安定性,癌抑制遺伝子のメチル化などの異常が明らかにされつつある.これらの解析結果をもとに,大腸癌に対する抗VEGF抗体薬,抗EGFR抗体薬,マルチキナーゼ阻害薬などの分子標的...

第100回日本消化器病学会総会消化管癌の分子病態学に関する進歩

食道扁平上皮におけるアルコール関連発癌機序の解明
天沼 裕介(京都大学消化器内科)
【目的】国際癌研究機関はアルコール飲料に関連するアセトアルデヒド(AA)を食道癌のGroup1発癌物質と認定したがその機序は不明である.本研究はAAによる食道発癌の分子病態を明らかにすることを目的とする.【方法】食道癌患者の非癌部食道生検からDNAを抽出し,AA由来DNA傷害の指標であるDNA adductをLC/MS/MSで測定し,内視鏡検査におけるヨード不染帯の程度(A群;不染帯なし:8例,B...

第100回日本消化器病学会総会消化管癌の分子病態学に関する進歩

食道癌の発生・進展におけるグローバルDNA低メチル化の意義
佐伯 浩司(九州大学消化器・総合外科)
【背景】Long interspersed nuclear element-1(LINE-1)はゲノム全体にわたって存在する転移因子であり,そのメチル化はゲノム全体のメチル化の指標である.一方,癌の悪性度が高いほどLINE-1のDNAメチル化レベルが低下していることが種々の癌で報告されている.【目的】食道扁平上皮癌におけるLINE-1メチル化異常を検討し,癌の発生・進展における生物学的意義について...

第100回日本消化器病学会総会消化管癌の分子病態学に関する進歩

Apurinic/apyrimidinic endonuclease-1(APE-1)によるSTAT3を介した食道癌進展機構の解析
名児耶 浩幸(日本医科大学消化器内科学)
(目的・背景)我々は,APE-1がp65を介したsignal伝達により食道癌組織に高率に発現していることを報告してきた(J Clin Biochem Nutr, 2013).今回は,APE-1が腫瘍組織内COX-2,VEGFの発現増強とapoptosisの抑制によって食道癌進展および化学療法感受性にSTAT3を介して影響を与えているかどうか検討し興味深い知見を得たので報告する.(方法)食道癌患者6...

第100回日本消化器病学会総会消化管癌の分子病態学に関する進歩

食道扁平上皮癌の増幅遺伝子SOX2はPTEN/AKT/mTORC1経路を介して腫瘍増殖を促進する
玄 泰行(京都府立医科大学消化器内科)
【背景】食道扁平上皮癌(ESCC)の治療方法は限られており,依然として予後不良である.我々はESCCのゲノムレベルからの病態解明を目的にこれまで高密度オリゴヌクレオチドアレイによる網羅的な遺伝子解析を進めてきた.その結果,多分化能の保持に必須の転写因子SOX2がESCCで遺伝子増幅の機序で発現亢進していることを明らかにしてきた.SOX2はESCCを含む種々の癌で癌促進的に働くことが報告されているが...

第100回日本消化器病学会総会消化管癌の分子病態学に関する進歩

胃癌の増殖進展に関与する癌微小環境の分子病態:胃癌細胞―線維芽細胞相互作用における低酸素の影響
木下 春人(大阪市立大学大学院腫瘍外科)
【背景】我々は,胃癌細胞の増殖進展には癌微小環境に存在する癌関連線維芽細胞(cancer-associate fibroblasts:CAF)が関与すること,また胃癌組織は低酸素領域が多く低酸素状態の胃癌は臨床的に悪性度が高いことを明らかにしてきた.これらの結果から,胃癌の病態解明には間質細胞のみならず酸素環境を含めた解析の必要性が示唆された.そこで今回,胃癌細胞とCAFとの相互作用におよぼす酸素...

第100回日本消化器病学会総会消化管癌の分子病態学に関する進歩

胃内視鏡洗浄廃液サンプルを用いた胃癌の分子病態研究の新展開
山本 博幸(聖マリアンナ医科大学消化器・肝臓内科)
消化管癌の分子病態解析研究は,いかに臨床応用できるかが重要になっている.我々は主に組織検体を用いた解析から胃癌における遺伝子異常を明らかにしてきた(NatureScienceNat GenetCancer Cell他)が,より実用化型研究にシフトし,内視鏡検査時の胃洗浄廃液を用いたDNAメチル化解析による胃癌遺伝子診断法を開発した( 第100回日本消化器病学会総会消化管癌の分子病態学に関する進歩

胃癌背景粘膜におけるLINE-1メチル化レベル及びCD44とHelicobacter pylori感染の解析
小澄 敬祐(熊本大学消化器外科学)
【背景】癌細胞に認めるエピジェネティックな異常の一つにDNAメチル化異常がある.DNAメチル化異常には,ゲノム全体の低メチル化と遺伝子プロモーター領域の部分的高メチル化があり,ゲノム全体の低メチル化はゲノム不安定性を誘発し発癌に寄与する.LINE-1はゲノム全体の約17%を占める転移因子で,LINE-1メチル化レベルはゲノム全体のメチル化レベルの指標となる.一方,癌幹細胞マーカーとして注目されるC...

第100回日本消化器病学会総会消化管癌の分子病態学に関する進歩

p53機能欠損大腸癌と癌微小環境
林 義人(大阪大学消化器内科学)
【背景】大腸癌の多段階発癌説において,p53は粘膜癌より浸潤癌に至る過程で変異が認められることが知られている.近年,癌細胞を取り囲む微小環境が注目を集めていて,既に大腸癌においても癌関連線維芽細胞の存在が予後に関わることが明らかとなっている.線維化は,浸潤癌の段階で多く認められるが,線維芽細胞が活性化される機構については不明な点が多い.【目的】大腸癌細胞のp53機能欠損が癌関連線維芽細胞に与える影...

第100回日本消化器病学会総会消化管癌の分子病態学に関する進歩

MFG-E8による大腸癌の発生・浸潤の促進―インテグリンを介した細胞増殖と血管新生の分子機構―
楠 龍策(島根大学医学部内科学講座第二)
【目的】MFG-E8(Milk-fat globuluer EGF 8)は分泌型蛋白で,アポトーシス細胞の貪食を促進し生体の恒常性維持を担っている.一方,最近ではMFG-E8が多様な機能を有することが報告されている.我々は大腸腫瘍の発生と進展におけるMFG-E8の機能解析を行い治療応用について考察した.【方法】(1)MFG-E8ノックアウト(KO)マウスを用いて,アゾキシメタン(AOM)とデキスト...

第100回日本消化器病学会総会消化管癌の分子病態学に関する進歩

大腸癌細胞由来転移性肝腫瘍の増殖における酸性スフィンゴミエリナーゼの役割
大澤 陽介(岐阜大学薬理学)
【目的】セラミドやスフィンゴシン1リン酸(S1P)をはじめとする種々のスフィンゴ脂質は,発癌や癌細胞の増殖・生存・アポトーシス等に関与することが知られている.酸性スフィンゴミエリナーゼ(ASM)はスフィンゴミエリンをセラミドに分解する酵素であり,さらにセラミドよりスフィンゴシンやS1Pが生成される.そのためASMは細胞機能において種々の役割を果たすが,転移性肝腫瘍における役割については不明な点が多...

第100回日本消化器病学会総会消化管癌の分子病態学に関する進歩

大腸癌の分子診断・標的治療の新規バイオマーカーとしてのmicroRNA-31の可能性
五十嵐 央祥(札幌医科大学消化器・免疫・リウマチ内科学講座)
【目的】BRAF遺伝子は,EGFR下流シグナルの活性化に重要な働きをする遺伝子であり,抗EGFR抗体薬における治療効果予測のバイオマーカーであること.また新たな発癌経路として近年,注目されているserrated pathwayにおいても高頻度にその変異が認められることから大腸癌の重要な遺伝子異常の一つと考えられる.一方,マイクロRNAの発現異常は多くの癌で報告され,新規バイオマーカーとして有望であ...

第100回日本消化器病学会総会消化管癌の分子病態学に関する進歩

microRNA-18aは癌関連蛋白hnRNP A1を分解し大腸癌細胞に細胞死を誘導する
藤谷 幹浩(旭川医科大学消化器血液腫瘍制御内科学)
背景:癌細胞において複数のmicroRNA(miR)の発現異常が認められ,癌の発育・進展に関与している.この作用機序は,miRが癌関連分子のmRNAと結合し,その翻訳を制御するとされる.本研究では,大腸癌細胞においてmiR-18aが癌関連蛋白hnRNP A1と直接結合してこの蛋白を分解することで,大腸癌細胞に細胞死を誘導するという新しい癌抑制メカニズムの存在を明らかにする.方法:RT-PCR,ウエ...

第100回日本消化器病学会総会消化管癌の分子病態学に関する進歩

慢性炎症に伴う大腸腫瘍発生におけるDicer遺伝子の特殊な癌抑制作用の解明
吉川 剛史(東京大学消化器内科学)
【背景】個々のmicroRNA(miRNA)には腫瘍促進的にも抑制的にも機能するものがあることが知られているが,miRNAの全般的な発現低下は癌によく認められる現象であり,逆にmiRNAの発現低下が様々な臓器の発癌に関与すると報告されている.我々は炎症性ストレスがmiRNAの機能を低下し,それが炎症性発癌の機構の一つではないかと考え検討を進めているが,今回はそれに関連してDicerの発現量を減らし...

第100回日本消化器病学会総会消化管癌の分子病態学に関する進歩

腸管腫瘍由来幹細胞に対するDNAメチル化阻害薬の効果
齋藤 義正(慶應義塾大学薬学部薬物治療学)
【目的】我々はDNAメチル化阻害薬がマイクロRNAを含む重要ながん抑制遺伝子を活性化することを報告してきた(Saito Y et al. Cancer Cell 2006).DNAメチル化阻害薬は骨髄異形成症候群の治療薬として大きな効果を上げているが,固形腫瘍に対する効果は不明である.また近年,現行の抗腫瘍薬に抵抗性を示すがん幹細胞の存在が明らかになった.本研究では,動物モデルを用いて腸管腫瘍由来...

第100回日本消化器病学会総会消化管癌の分子病態学に関する進歩

KIF20AはRNA結合蛋白質とメッセンジャーRNAの複合体を輸送することにより膵癌浸潤・転移を亢進させる
谷内 恵介(高知大学薬理学)
【背景】膵癌がきわめて予後不良である原因は,癌細胞の浸潤・転移能が高く,根治切除が行われたとしても術後の再発率が高いことである.したがって,そのメカニズムの解明が予後改善に重要である.【方法および結果】私達が以前報告した膵癌特異的腫瘍抗原KIF20Aは,膵癌細胞の増殖に関わるのみではなく,新たな知見として膵癌の浸潤・転移にも関与することを明らかにした.すなわち,KIF20AはRNA結合蛋白質とメッ...

第100回日本消化器病学会総会消化管癌の分子病態学に関する進歩